研究
感染症学に関する幅広い研究テーマに教室全体で積極的に取り組んでおります。
感染症の基礎的・臨床的研究(病原微生物解析と分子疫学研究、微生物ゲノム研究、薬剤耐性及び病原性メカニズム、感染病態及び感染様式の解明、感染症検査診断法、抗微生物薬適正使用と感染症治療、感染予防と制御策の確立等)に取り組み、感染症学・臨床検査医学におけるトランスレーショナル・リサーチを推進し、Physician Scientistとして感染症の指導的立場に立つ人材を育成いたします。
病態では、微生物ゲノム、薬剤耐性、病原因子、伝播メカニズムの研究、疫学では、薬剤耐性菌の分子疫学研究、下水疫学による感染症流行予測、検査診断では、新規遺伝子検出法、微生物同定/薬剤耐性検査法の確立、治療では難治性感染症の治療法の確立、ビッグデータ解析研究、予防制御では新規感染制御法、消毒技術の開発を行い、総合的な感染症研究を進めて参ります。このように、先進的、学際的、創造的な感染症研究を推進し、感染症科学を基盤とした臨床検査医学を発展させて参ります。
薬剤耐性菌の分子疫学研究
薬剤耐性に関する研究では、国内外における腸内細菌目細菌の薬剤耐性、特に、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の分子疫学研究を行い、耐性株の地域特性や国内流行クローンの伝播状況を解明いたしました。カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)のゲノム解析により国内流行クローンおよびプラスミドを介した伝播メカニズムの解明に取り組んでおります。
ワンヘルスの感染症研究
薬剤耐性の問題は人だけではなく、動物・環境も含めたワンヘルスの研究につながっております。厚労科研の研究班代表者として薬剤耐性ワンヘルスに関する研究を行い、日本における環境中の薬剤耐性の現状と課題を明らかにしました。環境中の薬剤耐性および抗菌薬の調査法の確立に向けた研究と地域の実態調査を推進し、環境中の薬剤耐性や抗菌薬がヒトへ与える影響を検討しています。
薬剤耐性と感染伝播メカニズムの解明
病院内におきましては、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)や多剤耐性アシネトバクターの全ゲノム解析により、高度薬剤耐性菌の伝播メカニズムを解明しました。
薬剤耐性菌、耐性遺伝子の種類や検出頻度には地域差がありますので、抗菌薬適正使用支援と感染対策活動を実施する上で、微生物ゲノムに関する研究を推進しております。
多剤耐性菌/難治性感染症における医療関連感染制御システムの確立
医療環境を介した薬剤耐性菌の伝播予防に関する研究を行っております。多剤耐性菌・難治性感染症における新たな感染制御の確立に向けて、環境消毒に関する研究を行いました。また、医療疫学研究においては、医療関連感染のビッグデータを解析し、新たな医療関連感染への対策強化の重要性を明らかにしました。カテーテル関連血流感染症の臨床的・微生物学的特徴を検討しております。
医療環境の病原微生物の汚染と感染伝播メカニズム、医療関連感染との関係について研究し、新たな医療関連感染対策技術の開発により医療関連感染の低減を目指しています。
感染症の検査診断法・治療法の確立
ネクストパンデミックに向けて、感染症の検査診断法・治療法に関する臨床研究も行って参りました。こちらに挙げたような感染症のトランスレーショナルリサーチ、多施設臨床研究、学内外研究機関・企業との共同研究を、研究費を獲得して多数実施して参りました。
病原体不明の感染症における微生物ゲノム解析および宿主遺伝子発現解析の統合による新たな病原微生物診断法の開発を目指しています。
産学共同研究
臨床感染症、感染症検査、感染症治療、感染予防・制御、臨床微生物に関する共同研究や受託研究を積極的に受け入れておりますので、当分野までご相談ください。